「表面が固まったから、次の作業に入れる」。コンクリートやモルタルを扱う現場では、この判断に注意が必要です。
硬くなること、水分が抜けること、必要な性能を得るために保護・管理することは、それぞれ異なります。
基本Ⅰでは、セメント・モルタル・コンクリートの違いを説明しました。今回は「硬化・乾燥・養生」を整理し、次の工程へ進む際の考え方を解説します。
硬化・乾燥・養生は、それぞれ意味が違う
硬化|セメントと水の反応によって硬くなること
セメント系材料は、セメントと水の化学反応によって硬化します。この反応を水和反応といいます。
単に水分が蒸発して固まるわけではありません。また、表面が硬くなった時点で、必要な強度がすべて得られているとは限りません。
乾燥|材料中の水分が失われていくこと
乾燥は、材料中の水分が外へ失われていくことです。表面が乾いて見えても、内部には水分が残っている場合があります。
床材の接着や塗装などでは、下地の水分状態が施工条件に関わります。そのため、硬さだけでなく、次に使用する材料に適した下地の状態かを確認します。
養生|必要な性能を得るために保護・管理すること
コンクリートの養生では、硬化や強度の発現に必要な条件を保つため、水分や温度を管理し、急激な乾燥や有害な作用から保護します。
現場では、床や壁を傷から守る作業も「養生」と呼びます。しかし、コンクリートの品質を確保するための養生とは、目的を分けて考える必要があります。
同じ「養生」という言葉でも、何を、何から、どの状態まで守るのかを明確にすることが大切です。
早く乾かせば、早く強くなるわけではない
セメントの水和反応には水が必要です。施工直後から急激に水分を失わせることは、必要な強度や品質を得るうえで不利になる場合があります。
一方で、その後に床材を貼ったり塗装したりする際には、仕上げ材が求める下地の水分条件を満たす必要があります。
つまり、硬化のために水分を保つことと、仕上げ前に必要な乾燥状態を確認することは、目的と時期が異なります。
養生方法や期間は、一般のコンクリートと既調合の補修材などで異なります。すべての材料に同じ散水・被覆・乾燥方法を当てはめず、採用する施工仕様や製品の指示に従います。
「歩ける」「載せられる」「貼れる」は別の判断
次の工程へ進めるかどうかは、何を行うのかによって確認内容が変わります。
人が歩く
歩行可能になる時期は、材料や施工条件によって異なります。表面に足跡が付かないというだけで、あらゆる作業に使用できるわけではありません。
資材を置く・台車を通す
人の歩行と、重量物の仮置きや台車の走行では、荷重のかかり方が違います。台車の車輪や資材の脚部など、狭い範囲に荷重がかかる場合もあります。
歩行できることを、そのまま資材搬入の許可と捉えないことが重要です。必要な強度や荷重条件を、施工計画に基づいて確認します。
表面に保護板を敷いた場合でも、それだけで下地の強度不足や荷重の問題を解決できるとは限りません。
床材を貼る・塗装する
仕上げ施工では、下地の強度に加え、水分、平滑さ、清掃状態、使用する材料との適合性などを確認します。
「歩けるほど硬い」ことと、「接着剤や塗料を施工できる」ことは同じではありません。補修材と仕上げ材の双方の施工条件を満たしているかを確認します。
何日待てばよいかは、現場条件によって変わる
「翌日なら大丈夫」「数日置けば乾く」と、日数だけで一律に判断することはできません。確認すべき条件には、次のようなものがあります。
- 使用する材料の種類と指定された施工条件
- 施工する厚さや範囲
- 気温や下地の温度
- 湿度や通風など、水分が抜ける環境
- 既存下地からの水分供給の有無
- 次の作業で必要になる強度や水分の条件
製品資料に示された時間も、その前提となる温度や施工厚さなどとあわせて読みます。現場の条件が異なる場合は、そのまま当てはめず、必要な確認を行います。
見た目だけで、下地の水分を判断しない
表面の色や手触りだけでは、仕上げ施工に必要な水分条件を確認しきれません。必要に応じて、仕様に定められた測定方法で確認します。
水分計を使う場合も、表示された数字だけを見るのではなく、機器の種類、測定モード、対象となる下地、測定箇所などを確認します。異なる機器の表示値を、同じ基準として扱えるとは限りません。
測定方法と判定基準をセットで確認し、採用する床材・接着剤・塗料などの施工条件に照らして判断します。
また、漏水や継続的な湿気の影響がある場合は、単に待つだけでは条件が整わないこともあります。水分がどこから来ているかの確認も必要です。
速硬性材料でも、確認を省略できるわけではない
工程上の制約から、早期に強度を発現する材料や、短時間で次工程へ移れる製品を検討する場合があります。
ただし、「速硬性」という名称だけで、どの仕上げもすぐに施工できるとは判断できません。
- 指定された施工厚さや使用環境に適しているか
- 歩行可能時間と、仕上げ可能時間が区別されているか
- 採用する仕上げ材や接着剤と組み合わせられるか
- 施工後に必要な養生方法が定められているか
工程を短縮する場合も、必要な確認を省くのではなく、その工程に適した材料と工法を事前に選定します。
エレベーター付帯建築工事では、養生時間も工程の一部
乗場の床補修などでは、次に機器や資材を搬入するのか、床材を貼るのかによって、引き渡すべき下地の条件が変わります。
補修作業が終わった時刻だけを伝えても、次の担当者は着手できるかどうかを判断できません。
引き継ぎでは、必要に応じて次の情報を共有します。
- 使用した材料と施工範囲・厚さ
- 施工日時と、養生中の環境条件
- 歩行・搬入・仕上げ施工を制限している範囲
- 次工程へ進むための確認項目と、その確認状況
- 未確認事項と、判断を確認する相手
養生は、作業が止まっているだけの時間ではありません。次の工程に必要な状態を整え、確認するための工程です。
ZEVIONが重視する付帯建築工事の統合施工でも、施工する作業だけでなく、養生と確認、次の担当者への引き継ぎまでをつなげて考えます。
まとめ|経過時間ではなく、次工程に必要な条件を確認する
硬化は水和反応によって硬くなること、乾燥は水分が失われること、養生は必要な性能を得るための保護・管理です。
歩行、資材搬入、仕上げ施工では、それぞれ確認すべき条件が異なります。表面の見た目や経過日数だけで決めず、材料の仕様と現場の状態に基づいて判断することが重要です。
次の基本Ⅲでは、改修現場でどこを確認し、どのような条件から補修材を選ぶのかを解説します。
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参考資料:一般社団法人セメント協会の公開資料、公益社団法人日本コンクリート工学会の養生に関する公開解説、株式会社サンゲツの床材施工上の注意。個別の施工では、設計図書・施工仕様および使用製品の最新資料を確認してください。
