仮囲いは、工事エリアを区切るだけでなく、建物を利用する方への影響を抑えるためにも重要な役割を担います。
前回の#1では、固定・転倒対策と、通行・作業・搬入の動線計画について解説しました。
今回は、粉じん・溶接ヒューム・騒音への対策と、清掃などの建物運用との調整についてお伝えします。
工事中も、建物の日常は続いている
エレベーター更新工事では、建物を使用したまま作業を進める場合があります。
仮囲いの外側では、人が通り、施設が営業し、日常の清掃や設備管理が続いています。
そのため、工事側の予定だけでなく、建物管理者や清掃担当者とも、作業範囲と日程を共有することが大切です。
床清掃やワックス施工との取り合い
例えば、工事期間中に床の洗浄やワックス施工が予定されている場合があります。
清掃液やワックスが仮囲いの下に入り込むと、養生材や仕上げへの付着、撤去後の見え方の差などにつながることがあります。
清掃する範囲、施工時期、仮囲いとの境目の扱いを事前に確認し、必要に応じて目張りなどを検討します。目張りに使う材料も、床材との相性や撤去時の糊残りに注意して選びます。
粉じん対策は、目張りだけで完了しない
斫りや切断、研削などの作業では、発生した粉じんが仮囲いの隙間や出入口から外へ広がるおそれがあります。
対策は、発生源・囲いの境界・出入口・作業後の清掃を組み合わせて考えます。
- 作業内容に適した集じん方法を検討する
- 仮囲いの継ぎ目や周囲との取り合いを確認する
- 出入口の開閉時に、粉じんが広がらない運用を考える
- 靴裏や搬出物に付いた汚れを、共用部へ持ち出さないようにする
- 堆積した粉じんを再び舞い上げない方法で清掃する
ただし、隙間を塞ぐだけでは、囲い内部の作業環境は改善しません。必要な換気や集じんと両立させることが重要です。
既存の建材を扱う場合は、その材質や事前調査の結果を確認し、対象物に応じた作業計画に従います。ここで紹介する一般的な仮囲いの目張りだけで、すべての粉じんに対応できるわけではありません。
溶接ヒュームは、作業環境と排気先まで確認する
溶接で発生するヒュームは、建物利用者への影響だけでなく、作業者の健康に関わる問題です。
「煙が外に見えなければよい」「ダクトを付ければよい」という判断では不十分です。
屋内の金属アーク溶接等では、関係法令や作業条件に応じた換気等の措置、呼吸用保護具などの確認が必要です。仮囲いの計画も、その作業環境対策と合わせて検討します。
排気経路を設ける場合は、共用部や建物の給気口などへ影響しないか、排気先まで確認します。既存設備への接続や変更を独断で行わず、関係者と協議します。
参考:厚生労働省「金属アーク溶接等作業の健康障害防止措置」(PDF)↗
仮囲いの防音は、壁・扉・隙間を一体で考える
工事音への配慮は、建物の用途や利用時間によって変わります。オフィス、ホテル、住宅、医療施設などでは、音が問題になる時間帯も異なります。
まず、どの作業で、どのような音が、いつ発生するのかを整理します。そのうえで、仮囲いの構成を検討します。
- 壁材の種類・厚さ・張り方
- 必要に応じた吸音材や遮音材の組み合わせ
- 壁の継ぎ目、上下端、周囲との取り合い
- 扉の構成と、閉じたときの隙間
- 換気口やダクトなど、音が通る経路
石膏ボードの厚さを変える、二重張りや両面張りを検討するなどの方法はありますが、一つの材料や厚さだけで、防音効果は決まりません。
また、材料を増やすと重量も増えるため、仮囲いの下地・固定部・扉の金物などへの影響を確認する必要があります。
実際の音の低減効果は、構成全体と現場条件によって異なります。必要に応じて施工前後の状況を確認し、建物管理者と対策を調整します。
躯体を伝わる振動音は、仮囲いだけでは抑えにくい
騒音対策では、空気を伝わる音と、床や壁などの躯体を通じて伝わる振動音を分けて考える必要があります。
斫りの打撃や、振動を伴う穿孔などは、躯体を通じて離れた場所へ音が伝わることがあります。
このような音は、仮囲いの壁を厚くするだけでは十分に抑えられない場合があります。
施工方法や工具の選定、作業時間帯、作業をまとめる時間と休止時間、事前の周知など、工程側の対策も合わせて検討します。
なお、夜間に移せば解決するとは限りません。ホテルや住宅などでは、夜間の音が大きな支障になる場合があります。建物の用途と利用状況に合わせて調整します。
換気・防音・避難を、別々に考えない
音や粉じんを抑えようとして隙間を塞ぐと、換気に影響する場合があります。設備を追加すると、通路や出入口を狭めることもあります。
一つの対策が、別の問題を生まないように確認することが大切です。
- 必要な換気経路が確保されているか
- 避難経路や扉の開閉を妨げていないか
- 消防設備や建物設備の機能に影響しないか
- 火気作業と、仮囲い・養生材の条件が整合しているか
建物設備に影響する変更は、管理者や関係者との確認を前提に進めます。
仮囲いの外側まで考えることが、施工品質につながる
工事が進んでいる間も、その建物には日常があります。
粉じんや音、汚れの持ち出し、清掃との取り合い。その一つひとつを事前に考え、作業中も状況を確認する。
仮囲いは、工事区域の内側と外側をつなぐ計画の一部です。
ZEVIONは、建物を利用する方への影響も含めて、付帯建築工事の施工を考えています。
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