エレベーター更新工事では、新しい設備の据付に伴い、乗場まわりの壁や床を復旧する工事が発生します。
完成後に見えるのは、塗装や壁紙、タイルなどの仕上げです。しかし、その仕上がりを支えているのは、表面からは見えなくなる不陸調整と下地造作です。
既存の壁や床に、新しく施工する部分をどうつなぐのか。三方枠や敷居に対して、仕上げ面をどこに設定するのか。付帯建築工事では、こうした取り合いを整理してから下地をつくります。
この記事では、エレベーター乗場まわりの床・壁について、不陸調整と下地造作の役割、施工計画で確認したいポイントを解説します。
不陸調整と下地造作は何が違う?
不陸(ふりく)とは、床や壁の面にある凹凸やうねりのことです。不陸調整は、仕上げ材を施工するために、その面を必要な状態へ整える作業です。
一方、下地造作は、仕上げ材を支える骨組みや面をつくる作業です。壁であれば、必要な仕様に応じて下地材を組み、ボードなどを取り付ける工程が該当します。
面の凹凸を直すことと、仕上げを支える下地をつくることは、役割が異なります。下地が不安定な状態のまま表面だけを整えても、問題を解決できるとは限りません。
最初に決めるのは、下地ではなく仕上がりの位置
撤去した部分を埋めれば、元どおりになる。改修工事は、必ずしもそう単純ではありません。
新しい仕上げ材が既存と同じ厚さとは限らず、接着剤や調整材を含めた構成も変わります。そのため、完成時の面と高さを決め、そこから逆算して下地を計画する必要があります。
- 採用する仕上げ材の種類と厚さ
- 既存の壁・床を残す範囲と、復旧する範囲
- 三方枠と壁仕上げの位置関係
- 乗場のしきいと床仕上げの高さ関係
- 見切り材や巾木など、周辺部材の納まり
これらが決まらないまま下地を先行すると、仕上げ段階で厚さや位置が合わず、手戻りにつながります。
床の不陸調整で確認したいこと
平らにすることと、水平にすることを分ける
不陸調整は、すべての床を一律に水平にする作業ではありません。既存床の高さ関係や設計上必要な勾配がある場合は、それらとの整合を確認します。
乗場まわりでは、敷居付近だけでなく、その先の通路まで含めて床のつながりを考えることが大切です。局所的な補修によって、不自然な段差や傾斜をつくらない計画が必要になります。
凹凸だけでなく、下地の状態を見る
床材を張る前には、表面の凹凸に加え、下地の強度、乾燥状態、汚れ、既存接着剤の残りなども確認します。
サンゲツの床材施工資料でも、下地の平滑さ、清潔さ、乾燥、強度などが確認事項として示されています。平らに見えるだけで、仕上げ材を施工できるとは限りません。
補修材や接着剤は、下地と仕上げ材の組み合わせに適したものを選び、それぞれの施工要領に従います。
調整材の厚さと施工条件を確認する
調整する深さや範囲によって、適した材料と施工方法は変わります。同じ材料を、深い欠損から薄い端部まですべてに使えるとは限りません。
使用可能な厚さ、下地処理、プライマーの要否、養生条件を確認し、仕上げ材を施工できる状態までの時間を工程に組み込みます。
壁の下地造作で確認したいこと
乗場の壁を復旧する際は、三方枠と既存壁の間をふさぐだけでなく、仕上げ面の位置と、それを支える下地の構成を検討します。
特に、既存部分と新設部分の境界では、下地の種類や状態が異なることがあります。継ぎ目の位置、端部の支持、固定方法、目地処理を含めて納まりを整理します。
塗装、壁紙、化粧パネルなど、採用する仕上げによって必要な下地処理も変わります。例えば、せっこうボードの目地処理には専用の材料や工法があり、仕上げに適した処理を選ぶことが重要です。
また、防火性能などが求められる壁は、見た目や施工しやすさだけで材料を変更できません。設計仕様や適用する認定内容を確認して施工します。
「乾いたように見える」と「次の工程へ進める」は違う
下地調整が終わっても、すぐに仕上げへ進めるとは限りません。材料の硬化や乾燥には時間が必要で、温度・湿度・施工厚さなどの条件によっても変わります。
表面の見た目や手触りだけで判断せず、材料メーカーが示す施工条件や確認方法に従うことが基本です。
工期が限られる場合は、養生時間を省くのではなく、使用条件に合う材料や工法、作業順序を事前に検討します。
既存部分との境界が、改修工事の難しさになる
新築と異なり、改修では「残す部分」と「新しくする部分」が隣り合います。既存床の高さや壁の面が、理想どおりに揃っているとは限りません。
補修範囲を狭くすると境界で納まりが難しくなる場合があり、広げれば建物利用や費用、工程への影響が増えます。
そのため、施工前に復旧範囲と仕上がりの考え方を共有し、どこまで整えるのかを関係者と合意しておくことが大切です。
傷んだ部分だけを見るのではなく、周囲とのつながりを見る。ここに、改修工事ならではの判断が求められます。
下地から仕上げまでをつなぐ、付帯建築工事の統合施工
床の補修、壁の下地造作、ボード張り、塗装、床仕上げ。これらは工種としては分かれていても、完成する面は一つにつながっています。
下地をつくる段階で仕上げの条件を把握し、仕上げを行う段階で下地の施工状況を確認する。その情報の受け渡しが、手戻りを減らすための重要な要素になります。
ZEVIONが取り組む付帯建築工事の統合施工は、こうした建築側の複数工種を、工程と納まりのつながりまで含めて捉えるものです。
完成した面から逆算し、見えなくなる下地を整える。不陸調整と下地造作は、エレベーター乗場の仕上がりを支える工程です。
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参考資料
サンゲツ|施工要領 ↗(別タブで開きます)
吉野石膏|目地処理工法 ↗(別タブで開きます)
施工条件は使用製品や現場ごとに異なります。実際の施工では、設計図書と採用製品の最新の施工要領を確認してください。

