エレベーターの更新工事とは、既存設備の状態や建物の利用計画に合わせ、機器やシステムを更新する工事です。リニューアル、モダニゼーションとも呼ばれます。
ただし、更新といっても、すべての機器を毎回取り替えるわけではありません。既存部材を活用する方法もあり、選ぶ工法によって解体・据付・付帯建築工事の内容が変わります。
この記事では、エレベーター更新工事を初めて知る方に向けて、更新を検討する理由、主な方法の違い、工事の流れを整理します。
なぜエレベーターの更新を検討するのか
日常の保守点検は、設備の状態を確認し、必要な整備を行うために欠かせません。一方、保守を続けていても、経年劣化や保守部品の供給状況、建物に求められる機能は変化します。
更新を検討する際には、次のような点を確認します。
- 機器の劣化状況と故障・修理の履歴
- 保守部品の供給状況と、今後の維持管理の見通し
- 導入したい安全機能や、利用しやすさの改善
- 建物の改修計画と、今後の使用期間
- 工事費だけでなく、保守や運用を含めた費用
例えば、日本エレベーター製造は、据付から20〜25年を経過したエレベーターについて、リニューアルの検討を勧めています。ただし、これは検討の目安であり、その年数で一律に使用できなくなるという意味ではありません。
経過年数だけで決めず、設備の状態と建物の将来計画を合わせて判断することが大切です。
主なリニューアル方法の違い
更新方法の名称や交換範囲は、メーカーや対象機種によって異なります。ここでは、工事内容を理解するための代表的な考え方を紹介します。
全撤去リニューアル
既存のエレベーター設備を広い範囲で撤去し、新しい設備へ更新する方法です。乗場の三方枠や敷居なども交換対象になる場合があり、それに伴う建築側の撤去・補修・仕上げを確認する必要があります。
準撤去リニューアル
再利用できる既存部材を残しながら更新する方法です。例えば、三方枠や敷居などを残す計画がありますが、どの部材を再利用するかは、機種や状態、採用する工法によって異なります。
制御リニューアルなどの部分更新
制御系を中心に、対象となる機器を更新する方法です。工事範囲や追加できる機能、継続使用する機器は個別に確認します。
工法の名前だけで比較せず、「何を交換し、何を残すのか」を確認する。それによって、建築工事の範囲や将来の更新計画も変わります。
エレベーター更新工事の基本的な流れ
以下は、建築側の工事を伴う更新の流れを理解するための例です。実際には、一部の工程を繰り返したり、干渉しない作業を並行して進めたりします。
1.現地調査・更新範囲の検討
既存設備、昇降路、機械室、乗場、搬入経路などを調査します。交換する機器と再利用する部分を整理し、建築側の補修や復旧が必要な範囲を確認します。
2.仕様・工程・担当範囲の調整
設備仕様、工事範囲、停止期間、作業時間帯などを調整します。必要な申請・検査等の手続きも、この段階から関係者で確認します。
設備工事と建築工事の境界について、誰がどこまで担当するのかを明確にしておくことが重要です。
3.仮設・養生・搬入準備
仮囲い、養生、作業設備、資材置き場などを整えます。建物利用者の動線と工事範囲を分け、資材の搬入や撤去材の搬出を進められる状態をつくります。
4.既存設備の解体・撤去
施工計画に沿って対象設備を解体・撤去します。再利用する機器や残す建築部分を保護し、撤去後に露出した下地などの状態を確認します。
5.建築側の補修・調整と、新しい設備の据付
必要なシャフト補修や開口部調整などを行い、新しい設備の据付につなげます。建築側の作業には据付前に行うものと、据付後に行うものがあるため、相互の工程調整が必要です。
6.周辺の復旧・仕上げ
更新範囲に応じて、三方枠まわりの壁、敷居まわりの床、撤去に伴う欠損などを復旧します。既存部分との取り合いを確認し、建物側の仕上げを整えます。
7.調整・検査・引き渡し
メーカー等による設備の調整・試験と、必要な検査・手続きを行います。建築側の完了確認や仮設撤去も含めて調整し、使用再開の条件を整えます。
機器が動くようになった時点と、建物利用者が使用できる状態になった時点を、同じものとして扱わないことが大切です。
工事期間と、エレベーターの停止期間は分けて確認する
更新計画では、現場の工事期間だけでなく、調査、仕様決定、機器の製作・手配などの準備期間も必要です。
さらに、工事全体の期間と、エレベーターが利用できない期間が一致するとは限りません。事前準備や復旧作業の組み方、採用する工法によって変わります。
計画時には、次の項目を分けて確認します。
- 契約・仕様決定から着工までの期間
- 現場で作業する期間と時間帯
- エレベーターが連続して停止する期間
- 通路や乗場の使用が制限される範囲と期間
- 使用再開までに必要な確認と手続き
特に、エレベーターが1台しかない建物では、停止中の生活や業務への影響も含めて、早い段階から調整する必要があります。
付帯建築工事は、更新工事の各段階に関わる
付帯建築工事は、最後に壁や床をきれいにするだけの仕事ではありません。
着工時の仮設・養生、撤去後の補修、据付に必要な開口部調整、据付後の下地造作や仕上げなど、更新工事の複数の段階に関わります。
そのため、設備側の工事内容が決まってから建築側を切り離して考えるのではなく、調査・計画の段階から双方の条件を共有することが重要です。
例えば、三方枠や敷居を残すか交換するかによって、周辺の壁・床に必要な工事は変わります。交換範囲が変われば、工程と費用の確認も必要になります。
ZEVIONの3つの事業領域と、付帯建築工事の統合施工
ZEVIONのTotal Vertical Engineering(TVE)は、据付・解体・付帯建築という3つの事業領域を示しています。
その中で、付帯建築部門が取り組むのが、建築側の複数工種をつなぐ統合施工です。
仮設、補修、下地造作、塗装、床仕上げなどを、それぞれの作業だけで区切らず、前後の工程や納まりまで含めて捉えます。
工事全体の流れを理解することは、自分たちの担当範囲を明確にし、次の担当者へ適切な状態で引き渡すことにもつながります。
何を更新するかを決め、そのために必要な解体・据付・建築側の作業を整理する。それが、エレベーター更新工事の全体像をつかむ第一歩です。
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参考資料
- 日本エレベーター製造株式会社:公式サイト掲載「リニューアル」
- 東芝エレベータ株式会社:公式サイト掲載「ロープ式エレベーターリニューアル」
東芝エレベータの公式サイト:東芝エレベータ株式会社 ↗(別タブで開きます)
更新方法や交換範囲、工程は、対象設備と建物の条件によって異なります。具体的な計画は、メーカー等の現地調査と提案内容を確認して進めてください。

