エレベーター更新工事は、既存設備を解体するところから始まるわけではありません。
その前に、建物利用者と作業場所を分け、資材を運ぶ経路を確保し、必要な作業設備を整える準備があります。
それが、仮設工事と揚重・搬入計画です。
完成後には撤去されるものも多い工程ですが、その計画によって、安全性や作業の進めやすさ、建物利用への影響が変わります。
この記事では、エレベーター更新工事における仮設と揚重の役割、準備段階で確認したいポイントを解説します。
仮設工事とは、作業を成立させるための環境づくり
仮設工事とは、本体工事を進めるために、一時的な設備や作業環境を整える工事です。
エレベーター更新工事では、現場条件に応じて、次のような準備が必要になります。
- 乗場まわりの仮囲いと、工事区画への出入りの管理
- 搬入経路や既存仕上げの養生
- 必要な作業床・足場と、安全な移動経路の確保
- 作業用の照明や電源の準備
- 資材・撤去材の一時保管場所の確保
- 揚重設備を設置・使用するための準備
必要な設備や担当範囲は、メーカーの工法、契約内容、建物の条件によって異なります。まずは工事全体を見て、誰が何を準備するかを整理します。
揚重とは?搬入計画とは何が違う?
揚重とは、機材などを使って資材や設備を吊り上げ、所定の場所へ移動させる作業です。現場によって、チェーンブロックやホイストなどを使用します。
一方、搬入計画は、荷物が現場に到着してから、施工場所へ届くまでの移動全体を扱います。車両の停車、荷下ろし、水平移動、揚重、一時保管までをつなげて考えます。
吊り上げられることと、目的の場所まで運べることは同じではありません。
途中の扉を通れない、曲がり角で方向転換できない、荷物を下ろす場所がない。そうした問題があれば、揚重機器の能力が足りていても搬入は成立しません。
搬入経路は、入口から設置場所まで確認する
搬入経路の確認では、通路の幅だけでなく、荷物の寸法・重量・形状と、使用する運搬機材を合わせて検討します。
- 車両を停め、荷下ろしできる場所があるか
- 扉や開口部の幅・高さに余裕があるか
- 曲がり角や踊り場で方向転換できるか
- 段差・傾斜・階段をどう通過するか
- 経路や仮置き場所が、荷物と運搬機材による荷重に対応できるか
- 建物利用者の通行や避難経路と干渉しないか
また、養生材や仮囲いを設置すると、使える幅や高さが変わる場合があります。何もない状態の寸法だけで判断せず、工事中の状態を想定して確認します。
床や階段を養生することと、重量物を安全に支持できることも別の問題です。表面の保護だけで荷重への対応ができると判断せず、必要に応じて建物側の資料や専門的な検討を求めます。
揚重設備は、機器の能力だけで判断しない
揚重機器を選ぶ際には、対象物の重量だけでなく、形状、重心、移動距離、必要な揚程、設置条件などを確認します。
さらに、機器本体、吊り具、機器を支える部分を含めた、全体の計画が必要です。既存の梁や金物があるからといって、そのまま吊り元として使えるとは限りません。
メーカーの取扱説明書では、設置場所の強度確認、定格荷重の遵守、使用前の点検などが求められています。機器の設置と使用は、専門知識を持つ担当者が、採用機器の仕様と現場条件を確認して行います。
操作や玉掛けに必要な資格・教育も、使用設備や作業内容に応じて確認します。本記事だけで機器や吊り方を選定せず、現場ごとの揚重計画と取扱説明書に従ってください。
揚重中は、人の動きまで管理する
荷物を安全に動かすには、その周囲で人がどう動くかも決める必要があります。
吊り荷の下や移動範囲に人を入れないことを前提に、立入管理、合図、作業者間の連絡方法を整理します。搬入経路が建物利用者の動線と重なる場合は、管理者と時間帯や通行方法を調整します。
昇降路まわりでは、上方・下方で進んでいる別の作業との調整も欠かせません。自分たちの搬入だけを見ず、工事全体の予定と照らし合わせて計画します。
仮設は、後の工程を妨げない配置にする
仮囲いを設置したら、部材が通らなくなった。資材を置いたら、次の作業場所がなくなった。こうした行き違いを防ぐには、仮設の段階から後工程を見ておく必要があります。
搬入する部材だけでなく、解体で出る撤去材の大きさや量、作業に必要な範囲、壁・床を復旧する位置まで確認します。
例えば、敷居まわりの床を復旧する予定があれば、仮囲いの位置や養生の範囲が施工と干渉しないかを事前に検討します。
今の作業を始められることと、最後まで工事を進められることの両方を考える。それが仮設計画の大切な役割です。
設置したら終わりではなく、維持管理と撤去まで計画する
仮設設備は、工事中に使い続けるものです。使用開始前の確認に加え、使用中の点検や、変更が必要になった場合の連絡・承認方法も決めておきます。
作業の都合で仮囲いや安全設備を独断で外すことがないよう、変更する範囲と担当を明確にします。
工事の終盤には、撤去する順序も重要です。まだ必要な養生や安全設備を先に外さず、残作業と建物の使用再開に合わせて撤去・復旧を進めます。
仮設は、一時的だから簡易でよいというものではありません。必要な期間、必要な役割を果たせる状態を保つことが求められます。
付帯建築工事の統合施工は、準備の段階から始まる
仮囲い、養生、搬入、補修、下地造作、仕上げ。それぞれの作業は、同じ現場の中でつながっています。
ZEVIONが取り組む付帯建築工事の統合施工では、建築側の複数工種を、前後の工程や納まりまで含めて捉えます。
仮設の配置が搬入を妨げないか。養生が補修の邪魔にならないか。撤去のタイミングが仕上げや建物利用に影響しないか。そうしたつながりを、準備段階から整理することが重要です。
なお、揚重作業や設備の担当範囲は現場ごとに確認し、メーカー・元請・関係業者と役割を明確にします。
工事ができる状態を、最初につくる。仮設工事と揚重・搬入計画は、エレベーター更新工事を支える準備の仕事です。
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参考資料
株式会社キトー|製品資料・取扱説明書 ↗(別タブで開きます)
象印チェンブロック|β型電気チェーンブロック取扱説明書[PDF]↗(別タブで開きます)
参考資料は特定製品の説明を含みます。実際の施工では、使用する機種の取扱説明書と、現場ごとの施工計画・安全基準を確認してください。

