エレベーター更新工事は、本体を交換するだけで完了するとは限りません。更新する範囲や建物の条件に応じて、既存設備の解体、新しい機器の据付、周囲の建築部分の補修・復旧などが必要になります。
さらに付帯建築工事の中でも、仮設、斫り、下地造作、左官、床、塗装、防水など、異なる技術が関わります。
なぜ、これほど多くの職種が必要なのでしょうか。この記事では、専門分業の役割と、工種をつなぐ工程調整の重要性を解説します。
多くの職種が関わるのは、必要な専門技術が異なるから
エレベーター更新工事では、機械・電気・建築の条件が重なります。設備を取り外す技術、新しい機器を設置する技術、建物側を整える技術は、それぞれ異なります。
同じ乗場の周囲でも、開口部を調整する作業と、床の下地を整える作業、壁を仕上げる作業では、材料も施工方法も確認項目も変わります。
分業は、それぞれの専門性を生かすための仕組みです。多くの職種が関わること自体が問題なのではありません。
重要なのは、それぞれの作業を、共通の完成形に向けてつなぐことです。
エレベーター更新工事に関わる主な役割
実際の施工体制や担当範囲は、契約、更新方式、建物の条件によって異なります。ここでは、工事を理解するための主な役割を整理します。
解体|既存設備を撤去し、次の施工へつなぐ
更新対象となる既存のエレベーター設備を撤去する役割です。撤去範囲や順序、重量物の取り扱い、搬出経路などを、現場条件に応じて計画します。
撤去する部分だけでなく、再利用する設備や残す建築部分との区分も重要です。撤去後の状態は、次に行う据付や建築側の補修に関わります。
据付|機器を設置し、設備側の施工を進める
更新計画に基づき、エレベーターの機器を設置する役割です。施工する機器や作業範囲は、更新方式によって変わります。
機器側の基準と、建物側の開口部や床・壁の条件を共有することが大切です。出入口周辺など、建築側との取り合いがある部分は、担当者同士で位置・寸法・施工順序を確認します。
付帯建築|施工環境と建物側の納まりを整える
付帯建築工事は、エレベーター工事に伴って必要になる建築側の工事です。現場条件に応じて、仮囲い・養生、補修、開口部調整、下地造作、仕上げ・復旧などを行います。
据付前に必要な作業もあれば、機器の設置後に進める作業もあります。そのため、付帯建築工事の中だけでなく、解体・据付の担当者との調整も必要です。
工事の統括・建物管理|施工と建物の運用を調整する
各工事をつなぐには、施工範囲、工程、安全上の条件、確認事項を整理する役割が必要です。
建物を使用しながら工事を行う場合は、建物管理者との調整も欠かせません。作業時間、搬入経路、利用者の動線、騒音を伴う作業、使用できる場所などを確認します。
誰がどの範囲を統括し、変更事項を誰に伝えるのかを、着工前に明確にしておくことが重要です。
付帯建築工事の中にも、複数の専門工種がある
「付帯建築」という一つの名称でも、その内容は一種類の作業ではありません。例えば、乗場周辺の改修では、施工範囲に応じて次のような工種が関わります。
- 仮設・養生:工事エリアの区画や、既存部分の保護
- 斫り・撤去:計画された範囲の既存建築部分の撤去
- 大工・LGS・ボード:壁などの下地造作や復旧
- 左官:床や壁の補修、下地の調整
- 床・塗装などの仕上げ:合意した仕様に沿った仕上げの復旧
- 防水:必要な現場における、ピットなどの防水工事
すべての現場で、これらの工事が発生するわけではありません。また、一つの工種ごとに必ず別の会社が担当するわけでもありません。
必要な施工範囲を整理し、それぞれの作業を担う技術と体制を確保することが基本です。
分業が「分断」に変わるのは、工種の境目で情報が途切れるとき
専門分業が機能するためには、各担当者が自分の作業だけでなく、前後の工程に必要な条件を理解している必要があります。
例えば、次のような情報が共有されていなければ、後工程で調整が必要になる可能性があります。
- 床の仕上げ厚さや、敷居との高さ関係
- 三方枠と壁下地・仕上げの位置関係
- 撤去後に判明した下地の損傷や、追加確認が必要な箇所
- 材料の養生・乾燥など、次の施工までに必要な条件
- 変更した施工範囲と、まだ完了していない作業
前の担当者にとっての「完了」が、次の担当者にとっての「着手できる状態」とは限らない。ここに、工程調整の難しさがあります。
ZEVIONが課題として捉える「分断」は、専門分業そのものではなく、こうした工種間の情報や段取りが途切れてしまうことです。
工程調整は、日程を並べるだけではない
工程表に各業者の作業日を記載することは必要ですが、それだけでは作業のつながりを確認しきれません。
次の作業に入るための条件が整っているか、ほかの作業と場所や動線が重ならないかまで検討する必要があります。
着手条件を共有する
「何日から施工するか」とあわせて、「何が確認・完了していれば施工できるか」を共有します。必要な寸法の確定、下地の状態、作業場所の引き渡しなど、条件は工程によって異なります。
作業場所と搬入経路を調整する
乗場や昇降路の周辺では、作業できる範囲が限られます。資材の仮置きや搬入出が、ほかの工事や建物利用者の動線と干渉しないように調整します。
同時に作業できるかどうかも、工程を早めたいという理由だけで判断せず、現場の安全計画に基づいて確認します。
変更点と未完了事項を引き継ぐ
現場で条件が変わった場合は、影響を受ける担当者へ伝え、必要な確認を行います。変更内容、確認した相手、残っている課題を記録すると、担当者が変わった際にも状況を共有しやすくなります。
ZEVIONの統合施工は、付帯建築工事のつながりを整える
ZEVIONが考える統合施工は、付帯建築工事に関わる複数の工種を、完成形と工程のつながりから捉えて施工することです。
仮設を考える段階で、その後の撤去や仕上げを見据える。下地をつくる段階で、仕上げ材や敷居との取り合いを確認する。各作業を個別に終わらせるのではなく、次の工程が成立する状態につなげます。
これは、一人ですべての作業を行うという意味ではありません。必要な専門性や資格、担当範囲を踏まえながら、工種間の確認と引き継ぎを整えることを重視しています。
工種ごとの技術を生かしながら、調整の抜けや認識の違いを減らしていく。それが、付帯建築工事の統合施工で目指す方向です。
TVEは、据付・解体・付帯建築の3つの事業領域
Total Vertical Engineering(TVE)は、ZEVIONが取り組む「据付」「解体」「付帯建築」の3つの事業領域を示しています。
そのうち、付帯建築の領域で、複数の建築工種をつなぐ考え方が「統合施工」です。
3つの事業領域それぞれの役割を明確にし、領域間でも必要な条件を共有する。そのうえで、付帯建築工事の中にある工程や情報のつながりを整えていきます。
Total Vertical Engineeringと3つの事業領域を見る
まとめ|専門性を生かすために、工種の間をつなぐ
エレベーター更新工事に多くの職種が関わるのは、それぞれに必要な専門技術があるからです。
その専門性を工事全体の品質につなげるには、担当範囲を分けるだけでなく、完成形、施工条件、変更点を共有する必要があります。
自分の作業が、次の作業にどうつながるのか。その視点を持つことが、分業を機能させ、付帯建築工事の分断を防ぐ出発点になります。
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