養生不足によるクレームは、床や壁の保護範囲が足りない場合だけでなく、養生材の選び方、固定方法、作業中の管理、撤去時の扱いによっても発生します。
養生は、材料を敷いたり貼ったりすれば終わる作業ではありません。
何を運び、どこを通り、どこで向きを変えるのか。建物の利用者はどこを歩くのか。工事中の動きを想定して計画することが大切です。
この記事では、エレベーター付帯建築工事の現場経験をもとに、養生で見落としやすいポイントを整理します。
養生不足で起こる損傷とクレーム
養生が不十分な場合、既存の床材・壁・柱・建具などに、傷や汚れ、へこみが生じるおそれがあります。
特に注意したいのは、次のような場面です。
- 搬入経路の床は保護したが、曲がり角の壁や柱を保護していない
- 台車の通行で養生材がずれ、床が露出している
- 養生材の下に砂や切りくずが入り込み、擦れて傷になる
- 養生テープを剥がした際に、塗膜の剥離や糊残りが発生する
- 工事中の養生の破れや浮きを、そのままにしている
保護するために設置した養生そのものが、傷や汚れの原因になる場合もあります。
そのため、施工前・使用中・撤去時の3段階で考えることが重要です。
養生材は、作業内容と仕上げ材に合わせて選ぶ
養生は、仮設計画の一部として検討する工程です。現場の規模、工期、作業内容に応じて、次の条件を確認します。
- 保護する床や壁の材質・表面状態
- 搬入する物の重量・形状と、台車の車輪や接地条件
- 人や台車が通る頻度
- 水分・砂・粉じんなどの影響
- 養生を設置しておく期間
そのうえで、プラベニヤ、発泡樹脂系の養生ボード、合板などの種類や組み合わせ、固定方法を検討します。
例えば、エレベーターの全面更新など、重量物の搬入出を伴う現場では、傷の防止だけでなく、荷重や衝撃への対応も考える必要があります。
「厚さが2mm以上なら十分」といった、厚さだけの判断はできません。製品の性能、運搬条件、既存床の状態に応じて選定します。
また、養生材を敷くことで、床や階段そのものの耐荷重が確保されるわけではありません。重量物の搬入計画と、仕上げ材の保護は、それぞれ確認が必要です。
養生テープは「強く貼れるか」だけで選ばない
固定力が必要だからといって、粘着力の強いテープを選べばよいとは限りません。
テープと仕上げ材の相性、貼り付け期間、温度などの条件によっては、剥がす際に表面を傷めたり、糊が残ったりすることがあります。
使用できる素材と使用上の注意を製品ごとに確認し、必要に応じて、管理者と相談のうえ目立たない箇所で事前確認を行います。使用対象外の素材には使用しません。
参考:日東電工「養生用テープ(床用)No.395N」の使用上の注意 ↗
都度養生と、長期間設置する養生の違い
養生には、作業時に設置して終了後に撤去する方法と、工事期間中、継続して設置する方法があります。
どちらを選ぶかは、建物の利用状況、作業頻度、通行条件などを踏まえて判断します。
長期間設置する場合は、養生材の摩耗やずれ、テープの浮き、湿気や汚れの滞留などにも注意が必要です。
表裏の向きや固定方法は、使用する製品の指定に従います。表面にエンボス加工がある場合でも、それだけで滑りを防げるとは考えず、水分や粉じん、靴・車輪との組み合わせも確認します。
端部の段差やめくれが、建物利用者のつまずきにつながらないかも、確認したいポイントです。
重量物の搬入時は、方向転換する場所に注意
養生材のずれや傷みが起きやすい場面の一つが、台車で重量物を運ぶときです。
特に、狭い場所で無理に向きを変えたり、車輪をこじるように動かしたりすると、養生材が引っ張られ、継ぎ目や固定部に負担がかかります。
搬入前には、直線部分だけでなく、曲がり角、出入口、段差、方向転換する場所まで確認します。
- 搬入物と台車が通れる幅があるか
- 方向転換に必要なスペースがあるか
- 壁・柱・建具に接触するおそれがないか
- 養生材の継ぎ目や端部が、車輪に引っ掛からないか
途中で養生がずれたり破損したりした場合は、その状態で搬入を続けず、作業を止めて確認・補修します。
床だけでは足りない。壁・柱・建具も確認する
「とりあえず床だけ養生する」では、実際の作業に必要な保護範囲を見落とすことがあります。
現場では、資材や台車だけでなく、工具、作業服、作業者の体が周囲に触れる場面もあります。
例えば、狭い通路で壁に体を寄せる。長い部材を持って曲がる。出入口を通過するときに建具へ近づく。
こうした動きを想定し、接触や汚損のおそれがある範囲を確認して保護します。
特に艶消し塗装などの仕上げは、汚れを拭き取っても跡が残ったり、部分補修で見え方が変わったりすることがあります。仕上げ材の特性を踏まえた事前対策が大切です。
揚重時は、吊り荷の経路と周囲の保護を分けて考える
重量物の揚重では、人の歩く範囲だけでなく、吊り荷が通る空間や、向きを変える位置も確認する必要があります。
例えば、PH階(屋上階)から機械室へ部材を搬入する際、階段の段鼻、壁、開口部周辺などが保護の検討箇所になります。
必要な範囲は、荷の形状や大きさ、搬入経路によって異なります。階段の「1〜5段目まで」と固定せず、実際の経路全体を確認します。
ただし、養生は吊り荷の振れや接触、落下を防ぐ設備の代わりにはなりません。
揚重作業は、責任者のもとで荷の重量、使用機材、経路、立入範囲などを確認した計画に従い、必要な資格・教育を受けた担当者が行います。そのうえで、建物の仕上げを守る養生を検討します。
養生は「一度貼ったら終わり」ではない
工期が長い現場では、養生材やテープの状態が変化します。作業開始前や搬入後など、状態を確認するタイミングを決めておくことが大切です。
- 端部や継ぎ目が浮いていないか
- 破れやずれによって、保護対象が露出していないか
- 砂・切りくず・水分などが入り込んでいないか
- 通行や扉の開閉に支障がないか
補修用の材料を用意し、不具合があれば原因を確認して補修・交換します。浮いた箇所にテープを重ねるだけで済ませず、下に入った異物や水分も確認します。
撤去するときまで、仕上げを守る
撤去時は、養生材に付いた砂や切りくずを周囲へ引きずらないように扱い、テープは製品の注意事項に従って剥がします。
施工前に既存の傷や汚れを写真で記録し、関係者と共有しておくことも、撤去後の状態確認に役立ちます。
最後に、傷・汚れ・糊残りなどがないかを確認します。
養生は、現場の動きを先読みする技術
何を運ぶのか。
どこで曲がるのか。
誰が通るのか。
いつまで設置するのか。
養生の計画には、その現場でこれから起こる動きを想像する力が必要です。
養生は、単なる保護ではなく「現場の動きを先読みする技術」です。
ZEVIONは、付帯建築工事の前後の工程まで見通し、養生の計画・維持・撤去までを一連の作業として考えています。
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